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福岡地方裁判所 昭和60年(ヨ)112号 決定 1985年3月14日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

公衆電信電話事業の民営化に伴う営業主体混同行為に当たる不当競争の防止をはかつた決定と思われるが、債権者提出の仮処分命令申請書によれば、その申請の理由は次のとおりである。「一、申請人は、公衆電気通信事業の合理的且つ能率的な経営の体制を確立し、公衆電気通信設備及び拡充を促進し、並びに電気通信による国民の利便を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とし日本電信電話公社として設立され、公衆電気通信業務として電気通信機器の販売、リース、取付工事等を行つているものである。

二、公社は、かように高度の公共性を有する事業体であるがゆえに、日本電信電話公社法(以下公社法という)第七条には「公社でない者は、その名称中に日本電信電話公社という文字又はこれに類似する文字を用いてはならない。」と定められている。

このことは、公社の信用を十分保護するとともに、誤認に基づく第三者の損害を防止するためである。

三、公社法第七条は「日本電信電話公社という文字又はこれに類似する文字」と規定しているが、これは見出しにも「名称の使用制限」と表現しているとおり、日本電信電話公社という名称又はこれに類する名称と同旨である。

類似する文字、すなわち類似する名称とは、第三者が、公社と混同誤認するおそれのある名称の意味である。つまり、名称中の主要部分に同一性又は類似性がある場合はもちろん、全体の印象からみて第三者を混同誤認に導くおそれがある限り、類似の名称と認められる。

四、申請人の九州地区を担当する「日本電信電話公社九州電気通信局」を指呼する慣用語として「電電九州」が世間一般に用いられ、「日本電信電話公社」の略称は「日本電電」「電電公社」「電電」等が一般に用いられており、「国際電信電話株式会社=国際電電=KDD」を別として一般に「電電」と言うときは「日本電信電話公社」を指称するものと謂つて良いのである。

五、被申請人は、電気通信機器、家庭用電化製造の販売、リース、及び取付工事等を主な営業とする会社であるが、その商号が日本電々九州株式会社となつておりそれは右のことから明らかなように申請人に類似する名称の使用であり申請人である「日本電信電話公社」と誤認混同されるおそれがある。

よつて、申請人は、公社法第七条及び不正競争防止法第一条第二号に基づき、被申請人の商号使用差止請求の提訴準備中であるが、現状を放置しておいては種々不都合も発生するので申請趣旨記載の仮処分決定を求めるため、本申請に及ぶ次第である。」

【決定】

当事者の表示別紙のとおり<省略>

右当事者間の名称使用禁止仮処分申請事件について、当裁判所は右申請を相当と認め、債権者に保証として福岡法務局に金五〇〇万円を供託させて次のとおり決定する。

主文

債務者は、日本電々九州株式会社、日本電電九州株式会社、又は日本電々、日本電電、電々九州、電電九州の商号を使用してはならない。

(高野 裕)

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